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遅れて来た小人はいまもなお遅れ続ける
2009.07.04 (Sat)
最後の物たちの国で

眠りに落ちる瞬間を意識で捉えようとしていた頃があった。ふとそんな過ぎた日ことを思い、そういえばいつの間にかそうした想いを抱かなくなたことにはたと気がつく。知らない間に消えてしまった想いは、おそらくこれだけではないのだろう。

ベッドに寝転がりながら「最後の物たちの国で」を読み終えて、一息つこうと目を閉じるとあっという間に眠りへと落ちた。それほどの時間ではなかったように思う。はっきりとは思い出せないものの、夢はきれいに晴れているようなものではなかったような気がする。

瞼を開くと、煌々と蛍光灯のともる白い部屋があった。夢を見る前と後とで変わりのない部屋は、ただ時計の針が進んでいるだけだった。

これまで読んだ他のポール・オースターの作品とは趣きが大分違って感じられた。どことも知れない国があり、そこは荒涼として退廃は日に日に侵食の度合いを強めていく。物語る人は、その国の内から言葉を紡いで送って寄越してきた。

その国の外にいて意味を汲み取る読み手には、やはりそれは物語から外には出ない。差出人のことを知らず、また宛名人ではない読み手は、想定されていない視点として推移を追う。

差出人は、物語の内で生きている。最後の一文まで、差出人は生きている。なぜならこれは、差出人が綴り送って寄越したものであるから、最後の一文まで差出人は生きていることが必定となる。しかし、物語を終えたのちの一歩には、差出人に生があるのかは分からない。その時点から、差出人は消息の知れない人となる。

だから、最後の一文がこれから先の生存を前提にした内容であることに、読み手はしがみつきたいほどの想いを抱く。眼前にはない世界がここから先に広がることを期待する差出人の意思を読み取りながら、読み手はいつしか物語られた世界が自らいる世界の映し鏡ではなかったのかと疑いを抱きはじめる。

最後の物たちの国。その国はどこだったろう。

雑感・雑記 trackback(0) comment(0) - 07:25


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